生活に困窮している人や特別な事情で困っている人に対して、手厚いセーフティネットが準備されている日本において、「お金がなくて生きていけない」という状況はそうそう起こりません。ここで紹介しているような様々な制度があるからです。
「遊ぶお金を借りたい」などの理由では利用できないものばかりですが、本当にお金がなくて困ったというときには、積極的に利用していきましょう。
国や自治体からお金を借りる制度
国のセーフティネットと言えば「生活保護」が有名ですが、第二のセーフティネットと呼ばれる制度もあります。
「生活保護を利用するまでではないが国の力を借りたい」という場合は、以下の制度を検討してみましょう。
総合支援資金貸付制度
「生活福祉資金貸付制度」と呼ばれるものの1つで、生活支援費、住居入居費、一時生活再建費の3つからなります。
制度を利用するためには、ハローワークと社会福祉業議会の支援を受けることが条件になります。主に低所得者や離職によって日常生活を送ることが困難な状態にある人が対象です。
また、この制度は「住居がある人」が対象となるため、住居がない人は先に「住居確保給費金(自治体の制度)」を申請する必要があります。すでに住居がある場合は、「住宅支援給付(自治体の制度)」を申請する必要があります。
- 生活再建までに必要な生活費
- 賃貸契約を結ぶために必要な費用(敷金や礼金など)
- 生活再建のための就職、転職を目的とした資格取得費用、債務整理費用
- 連帯保証人ありの場合は無金利、なしの場合は金利1.5%

生活福祉資金貸付制度は、窓口となっている民生委員や各都道府県の社会福祉協議会に相談することになります。以下の記事で制度について詳しく解説しています。
市役所でお金を借りる制度を理解する※本当に困ったときの生活福祉資金貸付制度まとめ
緊急小口資金貸付制度
この制度も「生活福祉資金貸付制度」の1つで、福祉資金に該当します。緊急かつ一時的な生活資金としてのお金を貸してくれますが、最大でも10万円程度が限度額となるため、文字通り小口融資です。
上で紹介した「総合支援資金貸付」を利用する際、貸し付け開始までの生活費を賄う目的で利用されることもあります。申し込み先も同様に社会福祉協議会となります。
- 医療費、介護費の支払いなど臨時の生活費が必要なとき
- 給料などの生活をするうえで必要なお金を盗難、紛失によって生活費が必要なとき
- 火災などによって生活費が必要なとき
- その他、やむを得ない状況によって生活費が必要なとき
求職者支援資金融資制度
就職や転職に際して、ハローワークなどの職業訓練を受講する場合は「職業訓練受講給付金(月額10万円+通所手当)」を受給することができます。
しかし、それだけでは訓練中の生活費が足らない場合にこの制度を利用します。よって、求職者支援制度で職業訓練受講給付金を受給する人が対象です。
- 月額5万または10万円(いずれも上限)×職業訓練の受講月数
- 担保、保証人不要(ただし、労働金庫指定の信用保証期間の利用が条件)
- 年3.0%(保証用0.5%込み)
母子福祉資金貸付制度
母子家庭を対象に、母親の就労や子どもが就学する場合に資金が必要になった際、都道府県、指定都市または中核市から貸し付けを受けることができる制度です。
「修学資金」「事業開始資金」「生活資金」など計13種類あります。
- 保証人が必要
- 金利は利用する貸し付けの種類により決まる(無利子または3%)
年金担保貸付制度
独立行政法人 福祉医療機構によって行われる融資制度で、年金(国民年金、厚生年金保険または労働者災害補償保険)を担保とした融資を行える唯一の制度です。
保健医療、介護福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需品の購入などで必要な支出を賄うために小口の融資が利用できます。
年金受給者のみが利用できる制度で、生活保護受給者や年金の支給が全額停止となっている場合は利用できません。融資金額については次のような条件があります。
- 10~200万円の範囲で1万円単位(生活必需品購入の場合は10~80万円)
- 受給している年金の0.8倍以内を上限
つづいて、返済金額についてです。
- 1回当たりの返済金額の15倍以内(おおむね2年6か月以内で返済できる額)
- 年金支給額(偶数月)のうち、1回当たりの支給額の1/3以下(1万円単位、下限1万円)
「年金担保貸付」という以上、年金が担保として必要です。また、連帯保証人が必要になるため、特定の人物もしくは保証制度を利用する必要があります。
金利は担保とする年金の種類によって異なり、年金の場合は1.9%、労災年金担保の場合は1.2%です。
困ったときの給付金まとめ
転職、失業、育児、介護などを理由に資金不足に陥ったときには、銀行や消費者金融などの貸金業者、または家族や友人を頼る以外にも方法があります。
「お金を借りる」という選択には返済が必須ですが、「給付」ならば、返済の必要がないので、より一層安定した生活を確保しやすくなります。
育児休業給付金
被保険者の人が1歳未満(条件により1歳2か月もしくは1歳6か月まで可能)の子を養育するために育児休暇を取得する場合、一定の条件を満たせば受けられる給付金制度です。申し込み手続きは「ハローワーク」で行います。
- 育児休暇開始日から過去2年間に賃金支払基礎日数が11日以上の完全月が12か月以上あること
- 男女問わず申し込み可能
- 同一の子に対する2回目以降の育児休暇は非対象
- 育児休暇開始段階で終了後に離職する予定がある場合は非対象
- 「期間雇用者」の場合、育児休暇取得時点で同一雇用者の下で1年以上の雇用実績があり、子どもが1歳6か月になるまでに雇用契約が満了することが明らかでないこと
職業訓練受講給付金
「雇用保険」、いわゆる「失業保険」を受給できない求職者、または雇用保険の受給期間が満了した求職者が、ハローワークの支援を受けて職業訓練を受講する場合の生活費を給付する制度です。申請はハローワークで行います。
- 本人の収入が月額8万円以下
- 世帯の収入が月額25万円以下
- 世帯の金融資産が300万円以下
- 現在の住居以外に土地や建物を所有していない
- 原則、職業訓練の全日程に出席している(やむを得ない理由がある場合は8割以上)
- 同一世帯に同時に給付を受けている人がいない
- 過去に給付を受けたことがある場合は6年以上経過していること
住宅確保給付金
離職や自営業などの廃業により経済的に困窮し、住居を喪失または喪失するおそれがある人に対し、家賃相当分の住居確保給付金を支給することで住居確保や就労機会の確保を支援する目的があります。自治体の福祉窓口で申請を行います。
- 申請日の段階で65歳未満かつ離職後2年以内であること
- 離職または廃業の段階で生計の主であったこと
- ハローワークで常用就職を目指して求職活動をしていること
- 生計を同じにしている同居親族が、申請者が居住可能な住居を所有していないこと
- 離職時の雇用形態、雇用期間、離職理由は問わない
介護休業給付金
被保険者の人が対象となる家族を介護する目的で「介護休暇」を取得した際、一定の要件を満たす場合に受けられる給付制度です。申請はハローワークで行います。
- 介護休暇開始日から過去2年間に【賃金支払基礎日数が11日以上の完全月が12か月以上】あること
- 65歳以降に介護休暇を取得した場合は非対象
- 介護休暇終了後に離職する予定がある場合は非対象
- 介護対象者が負傷、疾病または身体上もしくは精神衛生上の障害を理由に2週間以上の常用介護を必要とする家族を介護するための休業であること
お葬式代の受給
お葬式は高額な費用が掛かるもので、個人もしくは喪主に葬儀を賄えるだけの資金がない場合に給付を受けることができます。
- 国民健康保険被保険者の埋葬料
- その他健康保険被保険者の埋葬料
- 国民年金の場合は遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金から1つを受給できる
- 厚生年金の場合は遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給ができる
- 共済年金の場合は遺族基礎年金と遺族共済年金の受給ができる
- 故人が国民保健(第3号被保険者)の場合は受給できる公的年金はなし
不正にお金を借りてはいけない!
まだまだ認知されていない制度ですが、総合支援資金貸付のような福祉の救済制度はあります。そして、条件を満たしていれば誰でも利用することはできてますし、これは決して恥ずかしいことでもありません。
しかし、近年は生活保護などを不正に受給したり嘘の申告などをする方も多くいます。細かくチェックすべきなことは、お酒やパチンコ、競馬などのギャンブルに依存しているかどうかです。
しかし、不正に受給をする方がいることで、本当に救済を必要としている方が世間から冷たい視線を浴びてしまったり、肩身の狭い思いをしてしまうことがありますし、また、そのような風潮や流れによって支給額が減額される案も現在は出てきています。
国からお金を借りるデメリット
生活に困窮している方にとって、非常にメリットのある制度ですが、デメリットとなる部分はどのようなところなのか見ていきましょう。
まずは、審査が厳しいことでしょう。細かい条件がありますので、それらを満たしていなければ審査に通ることができません。また、審査には時間もかかりますので、今すぐなんとかしたいという方には不向きな制度です。
老年年金を受給している方や雇用保険の失業者給付を受給している方、就職安定資金などを利用している方、そして最後に雇用保険の受給資格がある方、これは受給までの待機期間中であっても給付の対象外となってしまいます。
通常のキャッシングやカードローンのように銀行や消費者金融からお金を借りる場合には、インターネットからの申し込みができるようになっているのですが、インターネットからの申し込みもできません。
申し込みをしたい場合には、現住所を管轄している市町村の社会福祉協会の申請窓口まで出向いて申請をする必要があります。
まとめ
自分が置かれている状況に応じて、最適な手段を選択することが大切です。1つしか選択肢がない状況ならば悩むこともないでしょうが、複数の選択肢がある場合には、それぞれの制度の特徴をよく理解したうえで決めることが必要です。
その際、役所や社会福祉協議会などを訪ねて相談することも大切ですが、必ずしも利用者に側に立って親身なアドバイスをしてくれるわけではないということを覚えておきましょう。
自分で調べた内容と相談した内容を総合して考え、時には強引に自分の意見や希望を押し通すことも必要です。